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完成後には見えない不具合~バルコニー笠木から侵入した雨水が招いた外壁内部の腐朽~
住宅の雨漏りというと、最近の家で「雨漏り」なんてないでしょ?と思う方が多いかもしれません。イメージでは、 「屋根」や「サッシまわり」から入って、ポタポタと雨が滴る・・という事を想像されるのでは?
しかし実際の現場では、
バルコニー笠木の天端から雨水が侵入し、 気づいた時には壁内部の構造材が腐朽していた
というケースも少なくありません。
今回は、
実際に当センターへ現地調査のご依頼をいただいた事例をもとに、
- バルコニー笠木とは何か
- なぜ雨水が侵入するのか
- 検証から読み取れた「内部劣化の兆候」
- 壁を開けて初めて分かった「内部の実態」
- 事前に防ぐためのチェックポイントと検査の重要性
について、
ホームインスペクターの立場から解説します。
今回の外壁の不具合は、表面に異変が出た時点で、内部ではすでに被害が進行している事例です。
この記事の目次
バルコニー笠木とは?
バルコニー笠木とは、腰壁や手すり壁の最上部(天端)に取り付けられる部材で、
- 雨水の侵入防止
- 壁の保護
- 仕上げとしての意匠
という重要な役割を担っています。
一見すると「ただのアルミや板金部材」に見えますが、実は雨仕舞の良否を左右する、非常に重要な部分になります

※上記の画像は、一般的な笠木の説明するために引用しています 出典:文化シャッター 手すり・笠木シリーズ カタログ資料より
現地調査で感じた「違和感」
今回、現地調査のご依頼を受けて確認した際、まず目に入ったのが、
地上より目視確認時点で、2F腰壁部分のサイディングの不自然な膨れがあり、明らかに通常とは異なる状態でした。
なお、梯子をかけて確認をするとサイディングのクラックやシーリング切れなどもありました。

※写真:外壁材の膨れの様子(白い線のように膨らみがあります)

※写真:外壁材同士の継ぎ目のシーリング切れの様子

※写真:外壁材のクラックの様子
外観だけでも
「内部に水が入っている可能性が想定される」
と判断できるレベルの状況でした。
サイディングの膨れが意味するもの
サイディングは、内部に水分を含むと、
- 反り
- 膨れ
- 表面の波打ち
といった見た目の変化も現れます。
これは単なる見た目の問題ではなく、内部下地や構造材が湿潤状態に置かれている可能性を示す重要なサインのひとつです。
検証から推察した内部の異常
外壁表面の目視確認に加え、
いくつかの検証方法を組み合わせて内部状況の推察を行いました。
その結果、
特にバルコニー笠木直下の壁周辺において、
周囲と比べて明らかに不自然な状態が継続している可能性が高い
と判断しました。
この段階で重要なのは、 「数値」そのものではなく、
外観の症状と立地条件、劣化の出方が一致しているかどうかです。
これらを総合的に見た結果、 短期間の雨水侵入ではなく、
一定期間にわたり雨水の影響を受け続けてきた可能性が高い
と考えられる状況でした。
リフォーム時に壁を開けて判明した真実
その後、リフォーム工事のタイミングで 実際に壁を開けて確認したところ、

※写真:リフォーム途中の写真になります。(一部の部材交換済み)
- バルコニー笠木の天端部からの雨水侵入
- 腰壁内部の木部(躯体)の腐朽
- 下地材の劣化・変色
が確認されました。
以上のことから外壁表面に現れていた「膨れ」は、 内部で進行していた腐朽の結果でした。
なぜ笠木天端から雨水が入るのか
笠木からの雨水侵入は、以下のような要因が想定されます。
- 固定ビス部の防水処理不良
- シーリングの劣化・切れ
- 笠木ジョイント部の施工不良
- 笠木天端の勾配不足による水溜まり
特に新築時の施工精度と、 経年によるシーリング劣化が重なると、気づかないまま雨水侵入が継続するケースが多く見られます。
放置するとどうなる?
笠木からの雨水侵入を放置すると、
- 腰壁内部の腐朽
- 構造耐力の低下
- カビ・シロアリリスク
- 大規模改修が必要になる
といった深刻な問題につながります。
特に怖いのは、外壁を開けるまで分からないという点です。
事前に防ぐためのチェックポイント
施主として意識しておきたいポイントは以下になります。
- バルコニー腰壁のサイディングに膨れ・反りがないか
- 笠木ジョイント部のシーリングが切れていないか
- 笠木天端に水が溜まりやすい形状になっていないか
- 定期的な外装点検や、第三者による専門的な確認
可能であれば、第三者による外装・防水点検を行うことで、被害が軽微な段階での対応が可能になる場合もあります。
また新築時こそホームインスペクションの「防水検査」が効く理由があります。
完成後に外壁を見ても、防水紙や笠木下の納まり、シーリングの処理状況までは確認できないため、不具合があっても気づくのは数年後になってしまいます。
当センターが実施している新築インスペクションの防水検査では、
- バルコニー笠木まわりの納まり
- 防水紙の破損の有無・重ね代
- サッシ周りの施工状況
- 外壁貫通部の施工状況
- 全体的な防水施工において雨水が「入りやすい形」になっていないか
といった、完成後には見えなくなる部分を重点的に確認します。
現場でよくあるのは、
「施工自体は間違っていないが、雨仕舞としては弱いおさまり」
になっているケースです。
こうした部分は、不具合が起きてからでは外壁を壊す以外に確認方法がありません。
だからこそ、新築時に一度きちんと防水検査を入れておくことで、
将来的な雨漏りや腐朽リスクを大きく下げることができます。
外壁の膨れや内部腐朽は、起きてから直すより、起こさない方が圧倒的に負担が小さいことが事実です。このように思うのも様々な現場を見てきた立場として、切実にそう感じています。
まとめ:外壁の異変は「内部劣化の警告」
今回の事例のように、外壁の膨れや違和感は、
「すでに内部で何かが起きている」
という明確なサインです。
特にバルコニー笠木は、雨仕舞の弱点になりやすいにもかかわらず、
見落とされがちな部位のため注意が必要です。
【お困りの方へ】
外壁の膨れ、雨漏りが心配、 原因が分からない不具合がある方は、
一般社団法人 住まいと土地の総合相談センターへご相談ください。
現場経験豊富なホームインスペクターが、表面だけでなく
「壁の中で何が起きているのか」
を見極め、適切なアドバイスを行います。
記事作成:ホームインスペクター 依田




