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2025.12.24

ハウスメーカーの現場監督について

今回は既に工事がはじまっている建築主様からの質問をご紹介します。

 

「仮住まい先が工事現場に近いので、工事中に現場を見に行く機会が多いのですが

現場監督と殆どお会いした事がありません。

ちゃんと現場で品質検査等をされているのか心配になってきました・・・。

そもそもハウスメーカーの現場監督の方って現場にはあまり来ないのでしょうか」

 

当センターに依頼されるお客様は、検査時に現地までお越し頂く方の割合が増えました。

どんな検査をしているのか気になる方、現場の施工状況が気になる方、気になる事があるから直接質問をされたい方、お客様によって理由は様々ですが、一生に一度の買い物ですから、工事が進むと見えなくなってしまう、その瞬間を自身の目で確認されたいという建築主様のお気持ちは当然ですね。

 

そのお客様の想いに応えるべく、請負者である住宅会社の現場監督は【お客様の注文通りの施工品質を確保した建物を納期内に完成させてお引き渡しをする事が最大の役割】になりますが、その役目を果たす為に、実際は何をしているのか?

 

ハウスメーカーの場合を例に、お話をさせて頂きます。

 

現場監督は契約後に登場

はじめての家づくり、どの会社にお願いするかの決め手で多いのは以下でしょうか。

家のデザイン・性能・コスト・保証・あとは営業マンとの相性。

 

契約前の商談時点では、営業マンと設計担当が中心となって進めていきますから

この時点で工事の現場担当者との接点は全くありません。

ハウスメーカー側も契約が決まってから、工事の現場担当者を選任するのが一般的です。

 

契約後、着工が近づいてきたら、もしくは着工時に工事担当者を紹介される為、一般的な家づくりの流れで「現場担当が良かったから、この会社に決めた!」という事は基本的には無いと思います。

 

大手のハウスメーカーでは、現場監督とは、地鎮祭で初顔合わせする事が一般的です。

ただし顔合わせだけでは、その人がどんな人で、どのくらい仕事が出来る人なのか判断は出来ません。営業マンからは当然、「優秀な工事担当者なので」と紹介される事もあると思いますが、実際には工事がはじまりやり取りを重ねない事には、わかりません。

工事がはじまると、窓口も営業サイドから工事サイドへ引き継がれますから、契約までの期間は営業マンがすごく良かったから契約を決めたのに、契約後で工事がはじまってみたら現場監督の対応が悪く、最悪の場合はクレームに発展するケースも耳にします。

良い営業マン・良い設計士に出会えて、良い現場監督によって、家づくりが進められる方もいるとは思いますが、そういったケースは少数派だという事はご承知おきください。

ハウスメーカーの施工体制

多くのハウスメーカーは、「品質の均一化」「工期短縮」「リスク管理」などを重視している為、【仕組み化された分業体制】とされています。

元請けは当然ハウスメーカーになりますが、一般的に現場は下請け工務店、もしくはハウスメーカーの子会社が進めていきます(実際に工事をしていく)。

積水ハウスを例に出すと、直接責任施工体制の確立を謳っており、積水ハウスが100%出資するグループ会社の「積水ハウス建設」や「指定工事店(協力工事店)」を中心とした組織による施工体制としています。

 

<施工体制の全体像>

積水ハウスHPより

積水ハウス建設グループHPより

上記の通り、積水ハウスの現場監督(正社員)・1次請けの積水ハウス建設(完全子会社)又は指定工事店(協力工事店)の現場監督・2次請けの施工業者(職人)が各自の役割を果たす事で、皆様(建築主様)と約束した建物を完成させて、納期内に無事引き渡す為に協力し合っているという事です。

 

立場が違えば、やることは違うわけで・・、元請けであるハウスメーカーの現場監督は何をするのでしょうか?

 

現場監督のやるべき事(主な業務)

大手ハウスメーカーの場合、会社の標準やルールにそって進める事が前提ですが

どの現場でも重要とされているのは下記の4管理になります。

  1. 工程管理工事が計画通りに進むように、全体のスケジュール管理・納期に間に合わせるように進捗管理を行う業務。
  2. 品質管理設計図書や仕様書通りに施工されているか。品質基準を確保する業務。
  3. 安全管理現場で作業する人が安全に作業出来るように、事故や災害を未然に防ぐ為に、環境整備や指導を行う業務。
  4. 予算管理予算内に工事を完了させる為に、資材・人件費等のコストを管理して、適切な利益を確保する業務。

 

複数の現場を同時に担当している為、全てを1人で対応するには限度があります。例えば、月に4棟の現場を受け持つ場合、1棟の平均工期が4ヵ月だと、常に16棟前後の稼働です。

週休2日制であれば、一ヵ月で20~22日程度の出勤となりますから、毎日現場を3件巡回したとしても、月48件の巡回が限度。

つまり、ひとつの現場には月3回程度(週に1回も回れない)が限度です。ただし、実際には内勤の時間も必要ですから、想定よりも現場に行かない(行けない)のが実情です。

そこで、下請け工務店にも現場担当者(現場代理人)がいますから、日々の現場管理(主に全体の段取り)、職人の手配や指示、資材の発注や搬入管理など、「実際の現場は下請けの施工店の現場監督が動かしている」という事になります。

工事監督の典型的な良い例と悪い例

優秀な現場監督の行動例

  • 第一に施主(建築主)の気持ちになって行動する。※実際には、ほとんどの現場監督が出来ていない。
  •  現場状況をまんべんなく把握できている。※マルチタスクが上手
  • 下請けの施工店(協力会社)や職人に対して遠慮しない。※指示が的確でわかりやすい
  • 危険予知能力・判断能力が高く、決定を後回しにしない。
  • 打合せした事、言われた事は必ず記録に残す。
  • 質問への受け答えが明確である。

要注意の現場監督の行動例

  • 会社の利益だけを考えて行動している。
  • 現場に全然行かない。
  • 下請け施工店の言い分を優先する。
  • 問題が起きても当事者意識が希薄。
  • 施主(建築主)への説明不足、認識齟齬が多々ある。
  • 判断能力が低く、レスポンスも遅い。
  • 記録を残さない為、言った/言わないでトラブルになる。
  • 何を聞いても、エビデンスもなく「よくある事です」「大丈夫です」と言う。

「現在、家づくりをはじめられている方、当てはまる項目はありましたでしょうか」

特に要注意の行動で思い当たる節が複数個ある場合には、ご自身から指摘されるよりも営業マンや現場監督の上席に申し入れをするのが、有効な手段だと思います。

まとめ

働き方改革の推進等の影響により、現場監督が現場に行く回数に制限を決めているハウスメーカーが増えてきました。主には、現場訪問への負担軽減や労働時間削減をする事だと思いますが、現場に行かない時間は、社内行事・研修や会議などで缶詰状態とも聞きます。

 

ハウスメーカーは標準仕様やルールも制定されている為、現場監督が現場にいかなくても下請け工務店や職人が現場を進めますから、極端に言えば勝手に出来上げる事が可能です。場合によっては、施工店や職人の技術力が高ければ、品質が高い現場もあり得る事ですが、それは ズバリ「運」だと思います。

 

一生に一度の買い物を「運任せ」で良いと思う方は殆どいないと思います。契約時に約束された家は、正しく施工されている事が大前提です。

当センターが用意している全ての検査項目を実施した場合、10項目以上ありますので現場監督が現場に行く回数と同じか、それ以上の可能性があります。

現場監督が現場に足を運ぶ回数はそんなに少ないの?と疑心暗鬼の方は、提出された見積もり明細を見てください。「現場管理費」はいくらになっていますか?

人間が動くことを考えると、その費用でまともな管理ができるとは思えない費用計上のメーカーが大半です。

当センターの検査項目・回数も特に重要な工程から決めています。

ご興味がある方は、まずはお問合せを頂ければ、家づくりに関するご相談に応じます。

 

 

記事作成:ホームインスペクター新井

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