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コールドジョイント”が招く重大な構造リスク ~一度きりの基礎工事だからこそ、適切な検査が欠かせない~
住宅の基礎コンクリートは、一見すると丈夫に見えますが、
施工中のわずかなタイミングのズレで
「コールドジョイント」という深刻な欠陥が発生する場合があります。
この記事では、ホームインスペクターの立場から
・コールドジョイントとは?
・なぜ起こるのか
・実際のリスク
・工事中に施主がチェックできるポイント
・当センターの検査メニュー(基礎配筋検査・基礎配筋検査2・打設立会い・基礎完成検査)で何が防げるか
をわかりやすく解説します。
基礎は“完成後には見えない部分”だからこそ、
施工中の写真・検査が何より重要です。
この記事の目次
1. コールドジョイントとは?
コールドジョイントとは、
本来一体化すべきコンクリート同士が十分に接合されず、境目が弱くなる現象です。
外観上は
・線状の段差
・色の違い
・継ぎ目のような模様
として現れることがあり、 一見すると「表面の問題かな?」と思われがちですが、
実際には構造的な弱点になる可能性があります。
ここでいくつか事例写真を紹介します。
写真補足:コンクリートが一体化していない“段差”のような状態(斜めの線状に見える部分)
打設のタイミングがずれたり、締固めが不足すると、このようにコンクリート同士がしっかり結合せず「すき間」や「線」が残ることがあります。これがコールドジョイントです。
◆鉄筋コンクリート造におけるRC壁にできたコールドジョイント

◆鉄骨系ハウスメーカーにおける基礎のコールドジョイント

◆上記拡大写真

◆鉄筋コンクリート造の解体現場より、実際にコールドジョイント部分が露出しており、コンクリート同士が十分に一体化していない状態がよく分かります。

2. なぜ起こるのか(発生メカニズム)
① 打設中の長い中断
先に流したコンクリートが硬化し始めた後に次のコンクリートを流すと、
両者が一体化せず“境界”ができます。
② 生コン車の遅延による時間差
ミキサー車が予定どおりに到着しないことで、
各区画の打ち継ぎに大きな時間差が生じてしまうケース。
③ バイブレーター不足(締固め不足)
打設中の締固めが不十分だと、
継ぎ目に空洞や隙間ができてコンクリートが一体化できません。
現場では、作業のちょっとした中断や「少し待ってください」の一言がきっかけで簡単に発生してしまうため、非常に管理が難しい欠陥でもあります。
3. よくある事例とその影響
事例① 立上りと耐圧盤の境目がくっきり
内部に空隙が生じている可能性があり、
耐久性低下・ひび割れ発生につながります。
事例② 外周基礎の継ぎ目に線状のひび
外周は温度差が大きく、特にコールドジョイントになりやすい部分。
雨水侵入 → 鉄筋腐食 → 基礎劣化 の連鎖につながる可能性があります。
事例③ 立上り部でコンクリートがしっかり入り込んでいない
打設時の流し込みや締固めが不十分だと、継ぎ目にすき間ができてしまいます。
すき間は強度不足やひび割れの原因になります。
4. 工事中にチェックできるポイント
施主でも確認しやすいポイントは以下のとおりです。
チェックポイント
・コンクリート打設が途切れず“連続して”進んでいるか
・ミキサー車の大きな遅延がないか
・バイブレーターをしっかり使用しているか
・打設後、立上りに不自然な境目(段差・線)がないか
また、建築会社に
「打設中の写真を必ず撮って見せてください」
と依頼することも重要です。
5. 放置するとどうなる?
コールドジョイントは見た目以上に深刻で、
放置すると次のような問題が起きます。
・雨水侵入
・内部鉄筋の腐食
・ひび割れの進行
・長期的な耐震性の低下
基礎は“建物全体を支える最重要部分”のため、
欠陥があると建物寿命に直結します。
6. 当センターの検査で防げること
御社HPに掲載されている以下の検査は、
コールドジョイントを防ぎ、施工品質を確保するためにも効果的です。
▼基礎配筋検査(耐圧盤コンクリート打設前)
コールドジョイントと直接の因果はないものの、
鉄筋配置のミスは後のコンクリート打設に影響します。
特にかぶり厚さ不足は、
のちのひび割れ拡大や腐食リスクを高めます。
▼基礎配筋検査2(立上りコンクリート打設前)
立上り部の鉄筋の組み方は、
コールドジョイントが起きやすい部分と密接に関係します。
コールドジョイントが発生しやすい立上り部について、
鉄筋の組み方などをチェックします。
打設工程で不具合が生じにくい鉄筋状態になっているかを確認します。
▼コンクリート打設立会い
※こちらはHPに掲載のない検査のため、ご要望に応じて個別相談・オプション対応となります。
コールドジョイントは打設中の管理不足が最大の原因のため、
第三者がその場で確認することで防止効果が非常に高くなります。
立会いでは
・打設が途切れていないか
・締固め(バイブレーター)が適切に施されているか
・打設手順が適正か
・生コン車の到着遅延による“時間差リスク”がないか
などを確認します。
コールドジョイントが発生しうる「瞬間」に介入できる唯一の検査です。
▼基礎完成検査
打設後、型枠を外したタイミングで行う検査です。
コールドジョイント、打設ムラ、ジャンカ、ひび割れなど、
完成後にしか確認できない欠陥をチェックします。
特に外周部は雨水侵入の起点になりやすく、
不十分な仕上がりは将来の劣化につながるため慎重に確認します。
7. まとめ:基礎工事は「一発勝負」です
コールドジョイントは、わずかな打設の遅れなど
「簡単な理由」で起きてしまうにもかかわらず、
家の耐久性・耐震性に大きな影響を及ぼす欠陥です。
しかし、
・基礎配筋検査
・基礎配筋検査2
・基礎完成検査
・+(要望があれば)コンクリート打設立会い
を適切なタイミングで行うことで、
多くのトラブルは未然に防ぐことができます。
“見えない部分の品質こそ、家の寿命を左右する”——
基礎は特にその典型です。
【お困りの方へ】
家づくりに不安がある、基礎工事に心配がある方は
一般社団法人 住まいと土地の総合相談センターへご相談ください。
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記事作成:ホームインスペクター依田




