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耐震等級ばかり気にしていない?ホントは大事な耐風等級のはなし
安心安全の家づくりと言えばまず「耐震」が思いつくのではないでしょうか。当センターでも、家づくりをするなら「構造計算による耐震等級3」を推奨しています。ただ、それらと併せて重要なのが「耐風性能」。今回は耐風性能の指標である「耐風等級」について紹介したいと思います。
・耐風等級って?
・耐風等級の分類
・500年に一度の暴風は吹くのか?
・風速と建物の関係
・耐震等級と耐風等級
・耐風等級って?
暴風に対する構造躯体の倒壊、崩壊等のしにくさ、損傷の生じにくさをを示すもので「住宅の品質確保の促進等に関する法律」(品確法)で規定されている住宅性能表示基準の評価項目のうちの1つです。
住宅性能表示基準の評価項目「構造の安定に関すること)」(一部抜粋)
耐震等級(構造躯体の倒壊等防止)
耐震等級(構造躯体の損傷防止)
耐風等級(構造躯体の倒壊等防止及び損傷防止)←コレです
耐積雪等級(構造躯体の倒壊等防止及び損傷防止)
・耐風等級の分類
耐風等級は1と2に分類されており、基準は下記のとおり。
耐風等級1(建築基準法の規定レベル)
・50年に一度程度の稀に発生する暴風による力に対して損傷しない
{1991年19号台風(りんご台風)の長崎気象台記録}
・500年に一度程度の極めて稀に発生する暴風による力
(稀に発生する暴風による力×1.6)に対して倒壊、崩壊しない
(最大風速37.0m/s、最大瞬間風速45.7m/s、伊勢湾台風の名古屋気象台記録)
耐風等級2(等級1×1.2)
・稀に発生する暴風の1.2倍の力に対して、構造躯体が損傷しないこと
・極めて稀に発生する暴風による力の1.2倍の力に、構造躯体が倒壊、崩壊等しないこと
ここでいう「稀に発生する暴風」とは、建築基準法施行令 87 条に規定する風圧力※に相当する力をいいます。
※建物が受ける風の力のこと。建物の向きや高さなどで圧力は変わります。
また、耐震等級でも同じですが、「損傷しない」とは大規模な工事が伴う修復を要するほどの著しい損傷はないという意味なので、ある程度の破損は許容するということです。「倒壊、崩壊しない」とは損傷は受けても、人命が損なわれるような壊れ方をしないということなので、実際にこのレベルのダメージを受けた建物はそのまま住み続けるとかは想定していないのが現状です。
ちなみに、この倍率が耐震等級の倍率(1.25 及び 1.5)よりも低く設定されています。これは、建築基準法レベルの 1.25倍の風圧力が生じる頻度は、1.25 倍の地震力と比べて極端に発生の確率が低い力を想定することになるのを配慮したものであると言われています。
・500年に一度の暴風は吹くのか?
建物はしばしば暴風の影響を受けます。暴風といえば台風、20年間で日本に接近した台風は年平均11.2個、うち沖縄を除く上陸数は2.75件程度※です。日本は台風大国と言えそうです。※気象庁「台風の統計資料」資料による
2019年令和元年東日本台風では東京で最大風速34.8m、最大瞬間風速43.8mが観測されています。また、直近では2025年10月の台風22号、23号が本土に上陸こそしていないものの、八丈島では最大瞬間風速54.7mが発生し、建物の屋根が飛ばされるなどの甚大な被害が出ています。法律の想定である500年に一度程度の極めて稀な暴風は実際にしばしば起こっていますね。さらに近年では環境の変化で災害は激甚化の傾向にありますので、これ以上の災害発生の可能性も十分にあり得ると認識しましょう。
・風速と建物の関係
実際の耐風等級を計算する上では、建築基準法上の基準風速(平均風速30m/s〜46m/sが日本各地で設定されている)に基づきますが、基準風速以上の暴風がふくことはあります。東京を例に挙げると、基準風速は32m/sですが、先述のようにこれを超える暴風が吹いています。また、瞬間最大風速では規定されていませんので、耐風等級1で想定しているよりも1.5倍~2倍程度の強い風圧力がかかることもあります。
・耐震等級と耐風等級の違い
耐震性能とは、地盤面で発生する地震による水平力から構造躯体の損傷や倒壊を防止する性能のことです。一方、耐風性能とは、建物に直接受ける風の力から、構造躯体の損傷や倒壊を防止する性能のことで、それぞれ求める強さによって等級分けされています。耐風等級2では、片流れなど屋根見付面が大きい場合等、プランによっては耐震等級3よりもハードル
が高いこともあります。
風圧力を受ける面積が大きくなれば、風による荷重が増大し、建物が浮き上がりやすくなります。一方、地震による水平力は建物が高ければ高いほど、上階構造が重いほど強い力を受け、建物が転倒しやすくなります。それぞれ異なる力に対する検討が必要なため、必要となる耐力壁の位置なども変わってきます。
・まとめ
耐風等級1はあくまでも建築基準法レベル、つまり法律で定められた最低基準のレベルです。日本の気候風土や近年の災害状況からも、耐風等級2は必要と言えるでしょう。各建設会社のセールストークも耐震等級ばかりが目立ちますが、耐震と同じくらい、自重の軽い(地震時の水平力がさほどかからない)木造で言えばプランによっては、耐風性能の方が重要です。早い段階で「耐震等級3と耐風等級2を構造計算で確かめてほしい」としっかり要望を出しましょう。
記事作成:ホームインスペクター鶴岡